前にも少し触れた様に、ボクは「木」を専門とする研究者である。
具体的に言うと「スギ」を専門にしている。
もう少し具体的に分かりやすくに言うと、「スギの建物の材料としての利用」が専門だ。
もちろん、博士(能楽)
いやいや
博士(能書)
いやいや
博士(農学)
は持っている。
博士号は、我々の世界では「足の裏の米粒」と言って、確か「取って当たり前、取らないとなんだか気持ち悪い」という意味だったと思う。
なので自慢にもなんにもならない。
ただ、木のお話をするに当たって、
「あんただれ?」
と言われるのも何なので、素性の一部を明かしただけだある。
つまり、一応専門家なので、「そんなに変なことは言わないよ〜」ってことだ(性格が変なのは、ほっといて下さい)。
と言うことで、前置きは終わり。
今日から、時々、スギを中心とした木の話をしたい。あちこち飛ぶかも知れないが、その時は、ごめんなさい。
木の話は、あんまり面白くないかも知れないが、国産材(特にその代表であるスギ)をもっと使って欲しい、と言う日頃の強い思いもあったりする。
なので、ここでは、できるだけ実際の生活に役立ちそうなお話をしたいと思う。
…….ここで読むのやめたりして
(泣)
1回目なので、まずは、スギのあらましについて、軽く説明させていただきたい。
スギの名称の由来
スギの名称の由来は、真直ぐの木「直木」から来ているらしい(大和本草)。貝原益軒 の 「木直也故にすぎといふ、すぎは すぐ也」という言葉が良く知られている。
スギの名称から、真っ直ぐに整然と立ち並ぶイメージが頭に浮かんだアナタ、貝原益軒さんと同じ感性を持ってますよ(いや、ホント)。
この人だ。
特徴
スギは日本原産の常緑針葉樹で、英語で言うとJapanese cedar、学名はCryptomeria japonica (D.Don) だ。材の特徴を列記すると、
1 比較的軽くて(比重0.38くらい)とてもやわらかい。なので、ノコギリで切ったり、カンナで削ったり(つまり加工性)がとても容易だ。
2 晩材(年輪で色の濃いところ)と早材(色の薄いところ)の密度差(重さの違い)がとても大きいので、年輪がくっきりと判別出来る。
3 心材(丸太の中心に近いところ)と辺材(外側に近いところ)の色が大きく異なる。辺材の色は品種などによる違いはあまりないが、心材の色は赤っぽい色と黒っぽい色の2種類がある(厳密にはそれらの中間もある)。一般に、前者を赤心(アカジン)と言い、後者を黒心(クロジン)と言いう。
4 心材(特に黒心材)は抽出成分が豊富で、耐久性が高いが、その反面、辺材に比べると少し強さが劣る(実用レベルでは気にする必要はない)。…..なので、…..よく言われる「心持材(真ん中あたりに心のある柱など)が強い」という表現は、正しいとは言えない(これだけでも説明に1記事費やしそうだ)。
5 赤心の水分量は少なく、黒心の水分量は多い(木材実質の倍以上の水が入っていることも珍しくない)。なので、黒心は、乾燥が少し大変だ。
キリがないので、とりあえずはこんなところで…..。
生産量
スギは全国で植栽されているが、北海道では道南地域、沖縄県では本島北部地域のみに分布している。
国産材の素材生産量の樹種別割合は、スギが57%、ヒノキが12%、カラマツが11%、広葉樹が11%となっている(平成28年度林野庁資料)。
つまり、国産材の過半数はスギなのだ。
…..で、その多くは宮崎県で産出されており、平成3年以来全国一の素材生産量を誇っている(以下の資料参照)。
農林水産省「平成28年木材需給報告書」より
…..スギの生産量は、どんどん増えているうえに、年々丸太の径もくなっている。アイキャッチ画像のような40センチ前後の丸太がゴロゴロだ。
なので、用途をどう広げていくかが国を上げての大きな課題になっており、関連する研究プロジェクトも多い(ボクも一部参加している)。また、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」など関連法の整備をはじめとして、需要の拡大にむけた国の後押しも大きくなっている。
主な用途
スギの用途幅は大変広いが、圧倒的に多いのが建築材で、特に一般的な木造住宅用材が多い。具体的に言うと、柱、土台、板、垂木などだ。少し装飾的なものでは床柱、天井板などもある。それ以外にもあらゆる場面で使われているが、ここでは省略する。
近年では、大きな建物にも対応できる様に、 板を繊維方向が直交するように積層接着したパネル(CLT、直交集成板)や耐火性能の高い集成材など、様々な新部材がぞくぞくと開発されている。
以上、スギのあらましについて簡単に説明した。
なんだか、だんだん教科書みたいになってきてしまったかも?今回は概要紹介なので、お許しいただきたい。
次回からは、何かにフォーカスをあてて、身近で役立ちそうなお話をしたい。
…..ではでは、おやすみなさい。
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