木造の建物は火に「強い」!?

雑記

今日は、たまには研究者らしいことを書いてみよう。

 

 

木材は燃える。

…..なので、木造の建物は、火事になったらあっという間に倒壊してしまい、助からない。

 

この記事を読まれる多くの方は、こう思われるだろう。

まあ、普通に考えれば当たり前、…..かも知れない。

 

 

 

……ところが、意外や意外、必ずしもそうとは言えない!!

それどころか、逆に「木造の建物は火に強い」ともいえるのだ!!!!!

 

 

今回は、その証拠をあげて行きたい。

どうして燃えるの?

燃える(燃焼する)には、以下の3つの条件が必要になる。

  • 可燃物
  • 酸素
  • 熱源

これらがそろったときに燃焼が起こる。

可燃物となる主な物質は、木材、繊維、プラスチック、石油など有機化合物だ。これらに熱源(ライター等)を近づけて燃焼に必要な高温なると酸素と結びつく。…..その結果、火がつく

すごく大雑把に言うと、これが木材が燃える理由だ。

 

そして、建築構造材(建物を支える材)の中で、可燃物は、木材だけだ。

 

 

このイメージが「木造の建物は火に弱い」の認識に繋がるのは、ある意味当然かもしれない。

木造の建物は火に強い

さて、「木造の建物は火に強い(ともいえる)」などと言ってしまったからには、根拠を示さないといけない。

そろそろ、出てきそうだし

「ガウー」

 

 

……..

木材は熱を伝えにくい!!

木材は、以下の図に示す様に、めちゃくちゃ熱を伝えにくい(熱伝道率が低い)

上の数字よりも、サウナ風呂のベンチや背もたれが金属製だった場合を想像すれば、分かりやすいかも(もはや「拷問」)?
実は、熱伝導率の高さも、燃えるのと同様に、…..いやいや、場合によってはそれ以上に「火に弱い」原因となりえるのだ。
この場合、熱伝導率の低い木材は有利となる。

木材は高温下でも強度が低下しにくい

以下は、温度上昇に対する強さの低下割合を示す図だ。

鉄・アルミニウム・木材の過熱による強度の低下[Thompson, H.E., FPJ8-4(1958)]

 

この図を見ると、圧倒的に木材の強度低下割合が低い

例えば、加熱5分後の温度500℃到達時を見てみると…..

  • アルミニウム:強度が約90%も低下している。
  • 鉄:強度が約60%も低下している。
  • 木材:強度が約5%しか低下していない。

 

 

これが、冒頭で「木造の建物は火に強いとも言える」、と言った理由の一つだ。

このため、鉄骨造の構造体は、「耐火被覆(たいかひふく)」といって、熱から守るためのコーティングを行っているようだ。

 

もう一つある。少し大きめの建物には、設計上の配慮をすることも義務付けられているのだ。

燃えても避難時間を確保できる

ちょっと混乱させるかも知れないが、燃えるからといって、果たしてそれが住まいの構造体として使ったときに弱いかどうかは別だ

具体例に説明しよう。

焚き火とかで、板切れや細い木の枝であればすぐに燃えてしまうが、厚い木を燃やそうとしてもなかなか灰にならなかった経験はないだろうか?

これは、厚い木を燃やそうとしたとき、表面は焦げて燃えていくが、燃えた部分が炭になると、そこから先は、なかなか熱が伝わらなくなるためである(これを「炭化層」という)。つまり、「炭化層」が断熱材の役割を果たし、さらに燃焼に必要な酸素の供給を妨げる働きをするのだ。

そして、このような性質を利用した設計を「燃えしろ設計」と言う[平成 12 年 5 月 24 日 建設省告示 1358 号(準耐火構造)]。

具体的には、以下のとおりだ。

木材の炭化速度は、1分間に0.6mm~0.8mm程度
この規定により、木造の建物(燃えしろ設計)で火災があっても、30分~60分は、避難する時間を確保することが出来る

これが、冒頭で「木造の建物は火に強いとも言える」、と言ったもう一つの理由だ。

おわりに

以上、「木造の建物は火に強いとも言える」と言った、皆さんが普段あまり耳にしない話をしてみた。

これ以外でも「乾燥割れ材の方が強い」とか、「木を使うのはホントは環境に良い」など、過去にも「木材利用の誤解」に関連した記事を書いているので、興味があれば、是非、読んで欲しい。

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おわり。

 

 

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